私立大学医学部は学費が高額であり、普通のサラリーマン家庭では経済的に厳しいケースも多いです。
しかし、私立大学医学部では優秀な学生を確保すべく、奨学金制度を充実させ経済的負担を抑えることに努めています。
そこで今回は奨学金制度について紹介しながら、東京都内にある私立大学医学部の奨学金制度をまとめて解説していきましょう。
医学部で活用できる奨学金制度
私立大学医学部では学費が高額になるため、大学独自で様々な奨学金が用意されています。
なお、奨学金には貸与型と給付型の2種類あります。
貸与型とは、大学側が資金を学生に貸す代わりに卒業後は返済する義務が生じます。
ただし、中には自治体が貸与する特別修学資金のように、卒業後一定期間指定した病院で働くと返済が免除になる奨学金も。
いっぽう、給付型は返済する義務のない奨学金です。
無条件で返済する義務がない代わりに認定される難易度は高く、成績優秀者など非常に限られた医学部生しか利用することができません。
奨学金と言えば日本学生支援機構
大学生で最もポピュラーな奨学金と言えば、日本学生支援機構(旧育英会奨学金)でしょう。
日本学生支援機構には、第一種と第二種の2種類の奨学金があるので、それぞれを詳しく確認してみたいと思います。
第一種奨学金
第一種奨学金は無利子で月額最大64,000円の貸与を受けることが可能ですが、第二種に比べて条件は厳しめ。
高校生の平均GPA3.5以上が必要ですが、医学部を目指す優秀な受験生だとクリアしていることも多いかもしれません。
ただし、3人世帯で給与所得が752万円の上限が設けられており、私立大学医学部に通学させようと思う家庭にとっては給与所得条件をオーバーしているケースも多いのではないのでしょうか。
学費が6年総額3000万円の医学部で、月額にかかる費用は約42万円。
これに書籍代や生活費が上乗せされると考えると、第一種の給付額だけでは年収面からも非常に厳しいことが分かります。
第二種奨学金
第二種奨学金は有利子である代わりに月額最高16万円まで借りることができるため、より私立大学医学部に通うことが現実味を帯びてきます。
こちら年収制限も緩和されており、3人世帯でも給与所得1080万円まで利用できるため、私立大学医学部に通う家庭も対象になってくるはずです。
月額16万借りた場合、6年総額1,152万円の資金を奨学金で確保できることから、2000万円前半の私立大学医学部だと半分を賄えるので非常に現実的になってくるでしょう。
有利子といっても教育ローンやカードローンと比較しても非常に利率が低いので、報酬が医師も含めて返せない金額では決してありません。
区分 | 給与所得の世帯 | 給与所得以外の世帯 | ||
---|---|---|---|---|
第一種 | 第二種 | 第一種 | 第二種 | |
3人世帯 | 752万円 | 1,080万円 | 303万円 | 594万円 |
4人世帯 | 846万円 | 1,171万円 | 369万円 | 695万円 |
5人世帯 | 904万円 | 1,313万円 | 418万円 | 827万円 |
東京都内にある私立大学医学部の奨学金制度一覧
東京都内にキャンパスをかませる医学部の奨学金を一覧で紹介していきます。
経済的理由を除いた学力優秀は地域枠の奨学金をメインにまとめているので、私立大学医学部の学費が気になる受験生はぜひ参考にしてみることをおすすめします。
なお、奨学金の情報は変更や修正が起きる可能性があるので、医学部の公式サイトで最終的にチェックするようにしましょう。
杏林大学医学部
種類 | 金額 | 対象 |
---|---|---|
杏林大学奨学金 | 年額360,000円 | ①GPA、②面接、③小論文、⓸家計評価、⑤その他 |
学納金一部免除 | 初年度800万円、2年次200万円 | 一般入試正規合格者のうち成績上位者最大15名 |
慶應義塾大学医学部
種類 | 金額 | 対象 |
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慶應義塾大学医学部人材育成特別事業奨学金 | 年間200万円(総額800万円) | 一般入試成績上位者10名程度 |
医学部教育支援奨学金 | 年間上限5万円給付 | 臨床実習に備えた奨学金 |
医学部研究医養成奨学金 | 年間上限100万円給付 | MD-PhDコースを選択している学生 |
順天堂大学医学部
種類 | 金額 | 対象 |
---|---|---|
A特待生 | 6年間最大1880万円が減免 | 学力試験及び人物識見で優秀な合格者(2年次以降は学内成績を適用) |
B特待生 | 初年度合計90万円を免除 | 学力試験及び人物識見で優秀な合格者 |
基礎医学研究社養成奨学金 | 月額10万円を貸与(大学院修了まで) | 国際臨床医・研究医選抜の研究医特別選抜で入学した学生2名を対象 |
東京地域医療医師奨学金(特別貸与) | 2080万円+月額10万円 | 東京の地域医療に貢献したい学生10名 |
新潟医師養成修学資金貸与制度 | 月額30万円(合計2,160万円) | 新潟県の地域医療に貢献したい学生2名 |
千葉・埼玉・静岡県医師育成奨学金制度 | 月額20万円(合計1,440万円) | 医師として各自治体に貢献したい学生(千葉5名、埼玉7名、静岡5名) |
昭和大学医学部
種類 | 金額 | 対象 |
---|---|---|
昭和大学医学部特別奨学金 | 5,6年次の授業料相当額を給付 | 卒業後に本学の一員として貢献すること(15名以内) |
特待生 | 300万円免除 | 一般入試(Ⅰ期)上位合格者75名、B方式:地域別選抜で上位合格者12名 |
帝京大学医学部
種類 | 金額 | 対象 |
---|---|---|
帝京大学地域医療医師確保奨学金 | 入学金全額、授業料半額、医学教育維持費納入額相当を貸与(※返済免除の条件あり) | 卒業後指定された地域の医療機関で勤務する医師のある学生4名程度を、1年次後期に先行する |
福島県地域医療医師確保修学資金 | 月額23.5万円+入学金相当額100万円 | 福島県特別入試枠で入学した学生2名 |
茨城県地域医療医師修学資金貸与制度 | 月額25万円(総額1,800万円)貸与 | 茨城県特別入試枠で入学した学生1名 |
千葉・静岡県地域医療医師修学資金貸与制度 | 月額20万円(総額1,440万円)貸与 | 特別地域枠で入学した学生それぞれ2名 |
東京医科大学医学部
種類 | 金額 | 対象 |
---|---|---|
東京医科大学医学部奨学金 | 学費の一部を貸与 | 学業成績優秀かつ経済的理由により支払いが困難な学生 |
茨城県医師修学資金 | 月額25万円(総額1,800万円)貸与 | 茨城県地域枠入試で入学する者 |
授業料及び教育充実費の減免制度 | 授業料250万円および教育充実費250万円を免除 | 一般入試上位39位、共通テスト利用試験上位10名まで |
東京慈恵会医科大学医学部
種類 | 金額 | 対象 |
---|---|---|
特待生制度 | 授業料を初年度全額、2年次以降は半額を免除 | 入学試験の成績上位5名、2年次以降は前年度の成績上位5名 |
慈恵大学奨学生 | 学納金の全額または半額を貸与 | 対象は全学年で返済は無利子(10名程度) |
東京都地域医療医師奨学金 | 修学費6年合計2,250万円および生活費6年合計720万円 | 東京都地域枠入試の合格者 |
東京女子医科大学医学部
種類 | 金額 | 対象 |
---|---|---|
特待生制度 | 授業料280万円を4年次まで給付 | 一般入試合格者上位5名(入学後の成績が上位31位以下になった場合は打ち切り) |
東邦大学医学部
種類 | 金額 | 対象 |
---|---|---|
特待生制度(在学生向け) | 授業料のうち最高100万円を免除 | 各学年若干名で約15名を対象 |
東邦大学青藍会(父母会)貸与奨学金 | 学納金の3分の2を上限として貸与 | 医学部医学科生の約7名を対象 |
日本大学医学部
種類 | 金額 | 対象 |
---|---|---|
医学部土岐奨学金 | 年額20万円を給付 | 学業成績・人物が優れている学生 |
医学部永澤奨学金 | 年額20万円を給付 | 学業成績・人物が優れている学生 |
医学部特定医療奨学金 | 月額5万円を貸与 | 小児医療、周産期医療、救急医療を志す学生(5・6年生) |
日本医科大学医学部
種類 | 金額 | 対象 |
---|---|---|
特待生制度 | 初年度授業料250万円を免除 | 一般(前期)上位30名、一般(後期)10名、共通テスト併用(後期)上位3名 |
千葉・埼玉・静岡県医師育成奨学金制度 | 月額20万円(合計1,440万円) | 医師として各自治体に貢献したい学生(千葉4名、埼玉3名、静岡3名) |
地域枠の自治体貸与型修学金は注意点も
上記で東京や関東周辺の自治体が修学資金を貸与してくれる制度は、学費相当額に加え生活費まで貸与してくれるため、国公立医学部に通うよりも費用負担が抑えられます。
しかも、医学部卒業後に指定された地域の医療機関で医師として一定年数働いた場合は返済が免除となる特別な貸与制度です。
この奨学金は地域枠入試で入学した学生が対象になり、高額な学費で私立大学医学部を断念せざるを得ない受験生にとっては非常に魅力的。
ただし、いいことばかりではなく、地域枠入試は注意しておく必要があるポイントも存在します。
卒業後の進路が制限される
地域枠の場合は、卒業後の進路は自治体によって決められます。
したがって、自分が進みたい進路に進める確率は低く、理想のキャリア形成を築くことは難しいかもしれません。
最先端の施設と技術を提供する病院と違い、離島・へき地医療で働くことも珍しくないのが地域枠の特徴です。
入学してから初めて医療を学び、自分がやりたい分野も次第に分かっていくのが普通で、地域枠で入学したことを後悔してしまう学生も存在します。
離島・へき地医療を含め地域医療に興味がある受験生は問題ありませんが、安易に学費負担がなくなるからと地域枠で入学するのはリスクが高いです。
地域枠からの離脱は難しい
地域枠は上記のように、よほどの理由がない限り途中で進路変更ができない制度です。
しかし、これまで何名かは地域枠を離脱しており、問題となってきました。
そこで、2020年7月厚生労働省は、地域枠離脱防止策として、2021年専門研修から都道府県の同意を得ずに専門研修に参加した学生については日本専門医機構の「専門認定医」を行わないことを決定。
認定する場合は、都道府県の了承を得ることが義務付けられています。
これにより、地域枠で入学したにもかかわらず、約束を守らなかった医学生は専門医になることができくなり、キャリア形成に大きな支障をきたすことになるのです。
以上のことから、安易に学費相当分の奨学金が貸与されるからといって地域枠で入学することは危険であると言えるでしょう。
教育ローンは金利が高いのでおすすめではない
医学部が設置する奨学金制度の他に、金融機関が設ける教育ローンを利用することも可能です。
しかし、金融機関の教育ローンは金利が高く、おすすめではありません。
日本学生支援機構を第一優先で借りて、あとは医学部の奨学金制度を活用して最終手段として後回しにしましょう。
また、親の支払い能力など審査されるため、必ず借りれると限らない点は注意しておきたいところです。
まとめ
以上、今回は医学部の奨学金制度について紹介してきました。
私立大学医学部の学費は高額ですが、奨学金を上手く活用することで進学先の候補になる可能性は十分に考えられます。
東京にある私立大学は学費が割安な医学部も多く、かつ特待制度や奨学金を活用すれば経済的負担を大きく抑えることが可能です。
ただし、地域枠については卒業後の進路を十分考えたうえで入学の可否を決断することが重要となります。