東京都内にある国公立・私立大学医学部医学科の推薦入試を解説。
2020年の大学入試改革に伴い、センター試験が共通テストに変更になったことを筆頭にいろいろな制度が変更されています。
推薦入試制度もその1つで、出題内容も多少複雑になりました。
ここでは、国公立大学・私立大学の医学部で実施されることの多い「学校推薦型選抜」と「総合型選抜」について詳しく解説し、2021年度に推薦入試が実施される都内の大学も紹介しています。
なお、これまで「推薦入試」と呼ばれていましたが、「入試」が「選抜」に変更されたので、以下「推薦選抜」の名称を用いて説明していきます。
選抜(入試)方式の種類
大学の選抜方式は、共通テストを除いて「一般選抜」「学校推薦型選抜」「総合型選抜(旧AO推薦入試)」の3種類に大別されます。一般選抜は、国公立大学では共通テストの二次試験として実施されます。
河合塾によると、私立大学医学部医学科では最も募集人員の多いのが一般選抜で、次いで多いのが学校推薦型選抜、総合型選抜の順になっています。では、学校推薦型と総合型それぞれの特徴を見てみましょう。
学校推薦型選抜
学校推薦型は、出身高校の校長の推薦を受けることが条件とされるもので、「公募制」と「指定校制」の2つのタイプがあります。
公募制 | •大学からの出願条件(成績や課外活動の実績など)を満たし、 校長の推薦が得られる者 |
---|---|
•全国の高校から出願することができる | |
•東京大学はじめ国公立大学でも全体の90%以上が公募制の枠を設定している | |
指定 校制 |
•大学が指定する高校の生徒が対象。出願条件を満たし、校長の推薦を得られる者 |
•「合格した場合は必ず入学する者に限る」とされており、 原則、他大学との併願や合格後の辞退は認められない |
|
•私立大学が主で、国立大学には基本的に指定校推薦枠はない |
国公立大学医学部では公募制の枠が年々拡大傾向にあります。
医師が都心部に偏在化するのを防ぐため、出身地や医学部卒業後の勤務先を制限する「地域枠」を公募制枠に組み入れている大学が増えていることがその理由です。
私立大学の医学部でも同様に地域枠を設けているところがあります。
地域枠には、条件を満たせば医学部を卒業するまで奨学金を受給できるというメリットがありますが、卒業後の進路が限定される点に注意が必要です。
公募制の選抜方法は医学部によってさまざまですが、2021年度からは小論文、面接、プレゼンテーション(出願時に提出した書類について口頭で発表すること)、基礎学力試験もしくは共通テストを実施することが必須となります。
指定校推薦の場合、大学と高校の信頼関係の上に成り立っているので、校内選考を通れば医学部合格率は100%といわれます。
しかし、行きたい大学でも医学部医学科から推薦枠を与えられていなければ、一般選抜などほかの方式で受験することになります。
総合型選抜(旧AO推薦入試)
総合型選抜は、これまでは「AO(Admissions Officeの略)推薦入試」と呼ばれていたのが2020年より名称変更されたもの。
志望理由書、小論文、口頭試問、プレゼンテーション、グループディスカッション、資格・検定試験の成績などを通して受験生の資質や意欲、可能性などを総合的に評価し、大学が求める学生像(アドミッション・ポリシー)とマッチングするかどうかで合否を判定する選抜方式です。
志望理由書は医学部によって「自己推薦書」「エントリーシート」と呼ぶところもあります。
学校推薦型と総合型の違いは、総合型は高校長の推薦が必要ないことです。
AOのアドミッション・オフィスは、大学の入学選考事務局を指し、大学側が養成したい人材を確保するという意味合いがあります。
そのため、志望理由書などでは、高校時代に何をやってきたかよりも、これから医学部で何をやりたいか、目的やビジョンをアピールするほうが高得点につながります。
総合型選抜の枠を設定する大学も増加傾向にありますが、その背景には、グローバル化の進展やAI(人工知能)の技術革新に伴い、知識だけでなく主体性、多様性、協働性を発揮できる人材が求められる時代になったことがあげられます。
国公立大学医学部の総合型選抜では、出願要件は公募制ほど厳しくはありませんが、セミナーやスクーリングに参加してレポートを提出させる大学もあります。
また、総合型選抜でも2021年から共通テストもしくは各教科・科目に係わるテストが必須となります。
いっぽう、私立大学医学部の場合は、学習意欲や目的意識の高さを重要視するため、出願要件が厳しく、書類審査でふるい落とされるケースも見られます。
前述したように学校推薦型選抜や総合型選抜を導入する医学部が増えており、出願する受験生も増加しています。
推薦選抜のメリットは、一般選抜より早く合否がわかるため、もし推薦で不合格だった場合は一般選抜に再挑戦できる点です。
医学部側にとっても、早く入学者を確保できるというメリットがあることから、今後ますます推薦枠が広まっていくと予測されています。
東京都内で推薦選抜を実施する医学部一覧
現在、東京都内には医学部のある大学が13校あります。そのうち2021年度に推薦選抜を実施する大学は以下の通りです。
ただし、選抜内容は毎年のように変わり、ときには廃止される年もあるので、最新の選抜情報で確認する必要があります。
なお、指定校制の選抜内容については、大学から指定の高校へ 非公開で伝えられるため、この一覧には記載しておりません。
大学名 | 学校推薦型 (公募制) |
総合型選抜 |
---|---|---|
東京大学 (国立) |
3名程度 | ── |
東京 医科大学 (国立) |
5名 | ── |
杏林大学 (私立) |
── | 1名 |
順天堂大学 (私立) |
── | 4名※ |
帝京大学 (私立) |
10名 | ── |
東京医科 歯科大学 (私立) |
20名以内 | ── |
東京女子 医科大学 (私立) |
約20名 | ── |
東邦大学 (私立) |
── | 約10名 |
日本 医科大学 (私立) |
── | 2名 |
※順天堂大学の総合型選抜は、「研究医特別選抜」と「国際バカロレア選抜」という名称で、募集人員は2名ずつ。研究医特別とは臨床医として研究者を志す者が対象。バカロレアとはフランスの高校卒業証明書のようなもので、バカロレア試験の合格者が対象です。
一般選抜より推薦型選抜が簡単?
これまでの推薦入試では学力試験がないか、あっても科目が少ないため、一般選抜より簡単に合格できそうと思われがちでした。
しかし、ほとんどの大学が出願条件を定めており、だれもが受験できるというわけではありません。
高校3年間の成績が評価される
医学部の出願条件には「評定平均値4以上」あるいは「学習成績概評A」のように示されています。
「評定平均値」とは、高校1年から3年までの定期テストの成績から割り出した数値で、「学習成績の状況」ともいいます。
この評定平均値に基づいて成績をA~Eの5段階で表したものが「学習成績概評」。この成績基準をクリアできなければ出願することもできません。
国公立大学医学部の公募制では、ほとんどが「評定平均値(学習成績の状況)4.3以上」という厳しい条件になっています。
評定平均値 | 学習成績概評 |
---|---|
5.0~4.3 | A |
4.2~3.5 | B |
3.4~2.7 | C |
2.6~1.9 | D |
1.8以下 | E |
さらに、入試改革によって国公立大学は推薦選抜でも共通テストなど必須となり、私立大学でも学科試験が課せられるようになりました。
試験内容も医学部は一般選抜と同程度かそれより難しくなると見られています。
それというのも、医学部の人気が高く受験も難化する一方であることは一般選抜でも推薦選抜でも同じことだからです。
このように、医学部に推薦選抜で合格するには高校入学時から優秀な成績を維持し、課外活動でも実績を示すこと。それに加えて大学から期待される人物でなければなりません。
大学側はアドミッション・ポリシーにマッチする人物でなければ、募集人員に達しなくても締め切ってしまうことがあります。
そういう意味でも、医学部の推薦選抜は一般選抜より難易度が高いといえるでしょう。
浪人生や再受験生は出願条件のここに注目
出願条件に「1浪まで」のように明示している大学もありますが、特に記載されていない場合は、高校の卒業年度の条件から確認します。
「令和〇年3月卒業見込みの者」とあれば現役生が対象です。
「平成〇〇年以降に高校卒業した者」のように記載されていれば、多浪生や社会人からの再受験生も出願可能となります。
【まとめ】合格には専門知識のある医学部予備校での対策がおすすめ
推薦選抜は、志望理由書や面接、プレゼンテーション、口頭試問など一般選抜にはない特異な出題で、多面的・総合的に評価するのが特徴です。それに共通テストを利用する大学も増えています。
推薦選抜についての情報は大学のオープンキャンパスや一般的な予備校でも得ることはできますが、どのような対策が必要かは医学部専門の予備校で相談することをおすすめします。
医学部予備校は、医学部の最新入試情報やデータを豊富に持ち、講師陣も医学部受験のエキスパートばかりです。
学科試験の対策はもちろん、志望理由書の書き方や面接の受け方などもきめ細かく指導してもらえるので、試験や面接の当日は自信を持って臨むことができるでしょう。