医学部医学科には地域枠という入試制度を設けている大学が国公立・私立両方の大学に多く、学費負担を大きく抑えることが可能です。
医学部入試では、一般枠の他に地域枠という特別な制度が設けられています。
地域枠入試は医学部の学費負担を抑えられると注目されているいっぽうで注意点も存在しています。
今回は、医学部の学費を確認しながら地域枠制度について詳しく紹介していきます。
地域枠を検討している医学部受験生はぜひ確認してみて下さい。
私立大学医学部の学費は高い
私立大学医学部の学費は高いことで有名で、よく医師家系や経営者などの家庭しか進学できないと言われています。
しかし、最近は私立大学も国公立を目指す優秀な学生を確保するために大幅な値下げに踏み切る大学が続出。
最も新しく開学した国際医療福祉大学医学部では6年間総額1850万円と、2000万円を切る安さを実現しています。
また、順天堂大学・慶応義塾大学・東京慈恵会医科大学・日本医科大学など2000万円台前半の私立大学医学部も多く、最近はサラリーマン家庭でも進学できる医学部が増加しているのが特徴です。
いっぽうで、東京女子医科大学のように学費を1200万円値上げする大学もあるように、私立大学では学費の二極化が進んでいます。
もちろん、学費の安い医学部の偏差値は高い傾向にあります。
私立大学医学部学費一覧
私立大学医学部の学費を安い順でまとめています。
医学部医学科 | 所在地 | 学費(万円) |
---|---|---|
国際医療福祉大学 | 千葉 | 1850 |
順天堂大学 | 東京 | 2080 |
慶應義塾大学 | 東京 | 2176 |
日本医科大学 | 東京 | 2200 |
東京慈恵会医科大学 | 東京 | 2250 |
自治医科大学 | 栃木 | 2260 |
東邦大学 | 東京 | 2580 |
昭和大学 | 東京 | 2700 |
関西医科大学 | 大阪 | 2770 |
東京医科大学 | 東京 | 2940 |
藤田医科大学 | 愛知 | 2980 |
産業医科大学 | 福岡 | 3049 |
大阪医科薬科大学 | 大阪 | 3141 |
日本大学 | 東京 | 3310 |
岩手医科大学 | 岩手 | 3400 |
東北医科薬科大学 | 宮城 | 3400 |
愛知医科大学 | 愛知 | 3420 |
聖マリアンナ 医科大学 |
神奈川 | 3440 |
東海大学 | 神奈川 | 3500 |
近畿大学 | 大阪 | 3582 |
久留米大学 | 福岡 | 3620 |
獨協医科大学 | 栃木 | 3660 |
兵庫医科大学 | 兵庫 | 3700 |
埼玉医科大学 | 埼玉 | 3700 |
帝京大学 | 東京 | 3750 |
杏林大学 | 東京 | 3755 |
福岡大学 | 福岡 | 3760 |
北里大学 | 神奈川 | 3890 |
金沢医科大学 | 石川 | 3950 |
川崎医科大学 | 岡山 | 4550 |
東京女子医科大学 | 東京 | 4621 |
国公立大学医学部も意外と費用がかかる
国公立大学医学部の学費
入学金 | 282,000円 |
---|---|
授業料(1年) | 535,800円 |
6年総額 | 3,496,800円 |
私立大学医学部の学費を見たあとに国公立大学の学費を見ると、やはり安いです。
しかし、医学部入学後に発生する費用は学費だけではありません。
生活費や教材費ならびに試験対策のための講座代など様々な費用が生じることになります。
大学生の生活費統計
奨学金で有名な日本学生支援機構が実施した「平成30年度学生生活調査」によると、大学生独り暮らしの生活費の年間平均は111万1400円でした。
6年間に換算すると約666万円。
学費と合わせると総額1000万円ほどの費用負担が生じるため、決して安い金額ではありません。
なお、全国の一人暮らしの大学生を基準としているので、東京や大阪といった都心部であれば、更に費用負担は上がります。
学費負担を減らす方法の1つが地域枠入試で合格
奨学金のような返済負担が原則ない
地域枠で入学した場合、修学資金が貸与されますが、これは卒業後に自治体から指定された医療機関で一定期間医師として働いた場合は返済免除となります。
奨学金の場合は貸与された場合は返済の義務が生じますが、地域枠の場合は卒業後は自治体で働くことが前提となっている制度なので、実質返済免除というわけです。
医師になれば収入も安定しているので奨学金返済も他の職業に比べると負担が少ないですが、それでも返済免除になるのは魅力的ではないのでしょうか。
実質無料になる地位枠もある
地域枠で貸与される修学資金の金額は自治体によって様々。
月額15万円の自治体もあれば、学費相当額の修学資金を貸与してくれる地域もあります。
特に学費が高い私立大学医学部に進学する場合、学費相当額の修学資金は恩恵が非常に大きいですよね。
何千万円という学費が実質無料になるのですから。
一般入試よりも難易度が下がる?
地域枠入試は、受験資格が地元出身の受験生に限定されていること。
そして、卒業後は指定された医療機関で働く必要があることから、敬遠する受験生も少なくありません。
したがって、一般入試よりも志願倍率や難易度の点で劣るケースもよく見受けられます。
医学部合格を絶対に実現したい受験生は地域枠の利用も1つの方法です。
地域枠で入学する際の注意点
地域枠入試で医学部に入学すれば、高額な私立大学でも実質学費が無料で医師になれるので非常に魅力的な制度です。
ただし、もちろん注意点もあることを忘れてはなりません。
下記のポイントを入学前にちゃんと確認したうえで地域枠の受験を検討すると後になって後悔するリスクを減らすことが可能です。
卒業後の進路は決められない
まず、地域枠制度は自治体の医師不足を解消するために設けられた特別な入試制度です。
したがって、医学部に入学すると修学資金が貸与される代わりに卒業後は指定された医療機関で医師として一定期間(9年ほど)働かなければなりません。
ということは、医学部卒業後の進路は自由に決められないということです。
入学後に興味のある医療機関や専門分野が見つかったとしても、卒業後の最初の一定期間は進路に制約があることを理解しておく必要があります。
留年した場合は注意
医学部医学科は進級が厳しい大学も多く、留年することも珍しくありません。
この場合、注意したいのが地域枠で入学した場合の留年です。
自治体によって制度が異なりますが、茨城県は留年した場合も貸与されますが、最大6年間の貸与期間のため、6年ストレート卒業が実現できなければ、自己負担が発生。
いっぽう、東京都地域枠は、日本学生支援機構の奨学金と同じく留年で同一学年を再履修する場合は貸与が原則休止。
私立大学医学部の場合は1年間の学費だけで数百万円発生してしまうので、留年で学費が払えないなんてことにならないよう注意しましょう。
地域の条件を破ればペナルティあり
地域枠で入学したにも関わらず、指定された医療機関で初期臨床研修を受けない学生が一定数いたことで問題になりました。
このことを「離脱」と呼ばれれていますが、この場合は修学資金に金利が上乗せされたうえで一括返済のペナルティが生じます。
それでも、離脱が相次いだことで、厚生労働省は離脱防止策を作成。
まず、地域枠離脱者については、日本専門医以降の専門医て認定を行わない方針を決定。
つまり、専門医になることができず、医師としてのキャリアには致命的です。
また、地域枠離脱組の初期臨床研修を受け入れた病院については医師臨床研修費補助金を減額するとう病院側へのペナルティも設置。
地域枠で入学すれば、9年間は自治体で医師として働くことは不可避となります。
まとめ
今回は、医学部の学費と地域枠制度について詳しく解説してきました。
奨学金と違い地域枠の修学資金は実質返済免除で、私立大学でも学費が無料になるところが出てくるなど費用負担の面では非常に魅力的。
しかし、卒業後の進路が制限されることは入学前にちゃんと理解しておきましょう。